先崎氏は将棋のプロ棋士である。
症状がある程度落ち着いて、
将棋に向おうとしたとき、
まず簡単な詰将棋をしたとのことだったが、
ほとんどできなかったという。
文中で、彼は
「プロ棋士が、簡単な詰将棋も解けないなんて、大学の数学の教授が小学生の算数が解けないようなものだ」と自身の状況を例えていた。
プロ棋士や大学教授と並べるのはおこがましいが、
私にも似たようなことがおきた。
2+2が答えられない。3+3なら尚更。
全く算数的な頭の使い方ができなくなっていた。
指を使って考えようとしても無理だった。
医師に伝えてみると「そういう独特の感覚があるかもしれませんね」と言われた。
私は小学校の教員免許で職に就いていたのに、
算数もわからないようでは話にならないと思った。
それを嘆く気持ちにもならなかった。
やばい状況であることが実感できなかった。
それくらい頭が働かなかった。
先崎氏は、その後徐々に回復していく。
私もその後に復職を果たし、働いているうちに
いつしか足し算もできるようになっていた。